コールドスリープはどこまで現実?『パッセンジャー』の冬眠の旅|マウスは数日眠った、人はまだ眠れない
このページの公開: / 最終更新: / 書いた人:トゥモローノート編集部

この発表のまとめ
人を眠らせたまま冷やして、年を取らずに宇宙を旅する『パッセンジャー』のようなコールドスリープについて、人を何年も眠らせる研究は、まだ見つかっていません。冬眠しないマウスやラットを、脳の神経や超音波で数日の冬眠のような状態にすることには成功しています。人を深く冷やして命をつなぐ試験は2025年に打ち切られ、臓器の凍結保存は人の大きさのブタの腎臓まで来ています(査読前)。
- 主な研究
- 筑波大学・理化学研究所・ESA・各大学の研究チーム(論文)
- いつ
- に論文と発表を確かめました
- 段階
- 研究室での実験
この SF、どこまで現実?
『パッセンジャー』の世界は、いまどこまで来ているか
作品の設定乗客5,000人を乗せ、目的地まで120年かかる宇宙の旅。乗客は冬眠の装置で眠ったまま、年を取らずに新しい星へ向かう。

冬眠しない動物を、冬眠のような状態にする△ 研究室(マウス・ラットで数日)
脳の神経を働かせると、マウスの体温と代謝が数日間下がった。超音波で24時間を超えて休眠させた研究もある。
人を深く冷やして、命をつなぐ× 人の試験は打ち切り
動物では10°Cまで冷やして最大2時間。人で試す臨床試験は、参加者が集まらず2025年11月に打ち切られた。
臓器を凍らせて保存し、戻す○ 試作が進んでいる
ネズミの腎臓は100日保存して移植に成功。人の大きさのブタの腎臓は −150°C で1年保存して戻せた(査読前)。
宇宙で何か月も眠って旅する△ 構想(宇宙機関の試算)
ESA は冬眠で宇宙船の重さを3分の1減らせると試算したが、人の冬眠は「初期の研究」としている。
何年も年を取らずに眠り、未来で目覚める× まだ研究も無い
人を何年も眠らせる研究は見つからない。専門学会は、凍らせた全身を生き返らせる知識は今は存在しないとしている。

答え『パッセンジャー』のように人を何年も眠らせる技術は、まだありません。けれど、冬眠しない動物を数日「冬眠のような状態」にすることや、臓器を凍らせて戻すことは、研究室と試作の段階まで来ています。いちばん遠いのは「人で、何年も」の部分です。
いまの段階
いまの段階:研究室での実験(5段階のうち2つめ)
段階は、発表や論文に書かれた事実から選んでいます。「理論・アイデア」は、計算や構想の段階で、まだ実験で確かめられていないものです。
公式の発表に書かれていること
- 冬眠するホッキョクジリスは、体の中心の温度が −2.9°C まで下がっても凍らず、自分で目を覚ました。
- 冬眠しないマウスでも、えさが足りないときの一時的な休眠(トーパー)では、体温が 20°C まで下がる。
出典:Nature(2020)
- 筑波大学と理化学研究所などの研究チームは、脳の視床下部の神経を働かせると、マウスの体温と代謝が数日間にわたって大きく下がり、冬眠に似た状態になることを見つけた。戻ったあと、組織や行動に異常は見られなかった。
出典:理化学研究所(2020)
残りの10件を見る(出典つき)
- 筑波大学の発表では、この状態で体温の目安が約36°Cから約27°Cに下がり、冬眠も日内休眠もしないラットでも同じような状態を起こせた。
出典:筑波大学(2020)
- 2023年には、頭の外から脳に超音波を当てるだけで、マウスを24時間を超えて休眠のような状態にした研究が発表された。休眠しないラットでもできた。
- 大量出血で心臓が止まった人の脳を 10°C 未満まで冷やして手術の時間をかせぐ臨床試験(EPR-CAT)は、2025年11月21日に打ち切られた。理由は「参加者の集まりが遅く、成功の見込みが低い」。
- 大きな動物の実験では、10°C まで冷やして最大2時間、血の流れを止めても、神経が普通に戻ったと報告されている。
- ネズミの腎臓をガラスのように固めて(ガラス化)最大100日保存し、温め直して移植したところ、命を支える腎臓の働きが戻った(2023年)。
- 2026年10月14日には、人の臓器の大きさのブタの腎臓を −150°C で最大1年保存して戻し、移植の直後に尿が出たという論文が出た。査読(専門家の審査)の前の論文。
- ESA(欧州宇宙機関)は、6人が5年かけて火星を往復する計画を手本に、冬眠すれば宇宙船の重さを3分の1減らせると試算した。ただし人の冬眠は「初期の研究」の段階だとしている。
出典:ESA(2019)
- ESA は、火星へ向かう乗組員の代謝を普段の25%まで下げる考えを紹介している。
出典:ESA(2022)
- NASA は2013年、火星へ人を休眠させて運ぶ居住モジュールの構想に研究費を出した。構想では、4〜6人の居住モジュールの重さを今の20〜50トンから5〜7トンにできるとしている。
出典:NASA(2013)
- 凍結保存の専門学会(低温生物学会)は、凍結保存した哺乳類の全身を生き返らせる知識は今は存在しないとし、死んだあとに体や脳を保存することは「科学ではなく、推測か希望」だとしている。
出典:低温生物学会(2018)
ほかに確かめた出典:Nature(2020)
発表に書かれていないこと(効き目・安全性・値段・確実な時期など)は書いていません。この内容は2026年10月17日に公式の発表を確かめたものです。誤りや続報に気づいたら訂正の申し出からお知らせください。
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実現の予定:模擬の実験は2026年10月31日まで(人が火星に住む時期は発表に書かれていません)
アメリカ
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よくある質問に、この記事に書いてあることだけで答えます。
人はコールドスリープできるの?
まだできません。人を何年も眠らせる研究は、まだ見つかっていません。
動物ではどこまでできたの?
筑波大学と理化学研究所などのチームが、脳の視床下部の神経を働かせて、マウスを数日間冬眠に似た状態にしました。2023年には、超音波でマウスを24時間を超えて休眠のような状態にした研究も発表されています。
安全なの?
人では確かめられていません。人を深く冷やして命をつなぐ臨床試験(EPR-CAT)は、参加者の集まりが遅く、成功の見込みが低いとして2025年11月21日に打ち切られました。
臓器は凍らせて保存できるの?
研究が進んでいます。ネズミの腎臓は最大100日保存して移植し、働きが戻りました(2023年)。人の臓器の大きさのブタの腎臓を −150°C で最大1年保存して戻した論文も出ましたが、査読の前の論文です。
宇宙旅行に使えるの?
ESA は、冬眠すれば火星往復の宇宙船の重さを3分の1減らせると試算しましたが、人の冬眠は「初期の研究」の段階だとしています。
体を凍らせておけば未来で生き返れる?
凍結保存の専門学会(低温生物学会)は、凍結保存した哺乳類の全身を生き返らせる知識は今は存在しないとし、死んだあとに体や脳を保存することは「科学ではなく、推測か希望」だとしています。



