宇宙エレベーターはどこまで現実?『楽園の泉』の塔|素材は80GPa・数センチまで、あと10万km
このページの公開: / 最終更新: / 書いた人:トゥモローノート編集部

この発表のまとめ
地上から宇宙までケーブルを伸ばす宇宙エレベーターは、理屈は固まっていますが、いちばんの壁はケーブルの素材です。研究室では必要な強さに近い80GPa を超える束ができましたが、長さは数センチ。要るのは約10万kmです。宇宙で小さな昇降機を動かす実験は、結果がまだ公表されていません。
- 主な研究
- 大林組・静岡大学・宇宙エレベーター協会・各大学の研究チーム(論文)
- いつ
- に論文と発表を確かめました
- 段階
- 研究室での実験
この SF、どこまで現実?
『楽園の泉』の世界は、いまどこまで来ているか
作品の設定赤道上の衛星から、超繊維のケーブルを地上におろし、地球と宇宙を結ぶエレベーターを建てる。

仕組み(つり合いとおもり)○ 理論は固まっている
静止軌道の高さから地球側と宇宙側にケーブルを伸ばし、宇宙側のおもりでつり合いを取る。
ケーブルの素材の強さ△ 研究室(強さは近い)
必要なのは約100GPa。80GPa を超える束はできたが、長さはセンチメートル。
10万kmのケーブルを作る× まだ遠い
作れたカーボンナノチューブ1本は最長550mm。大きな単結晶のグラフェンも、まだ大量にはできていない。
宇宙で昇降機を動かす△ 小さな実験を試みた段階
静岡大学の超小型衛星で試みたが、結果は公表されていない。2025年の後継機は信号を受け取れなかった。
月の宇宙エレベーター△ 理論・計算
今ある素材でも作れるとする論文がある。試作の発表はまだ無い。

答え宇宙エレベーターの仕組みは、もう理屈の上では固まっています。足りないのは「強くて、とても長いケーブル」で、研究室の強さは目標に近づいたものの、長さは数センチです。地球より先に、月のほうが早いかもしれません。
いまの段階
いまの段階:研究室での実験(5段階のうち2つめ)
段階は、発表や論文に書かれた事実から選んでいます。「理論・アイデア」は、計算や構想の段階で、まだ実験で確かめられていないものです。
公式の発表に書かれていること
- 宇宙エレベーターは、赤道の上空約3万6000kmで地球と同じ速さで回る静止衛星から、地球側と宇宙側にケーブルを伸ばし、人や物を運ぶ仕組み。
出典:宇宙エレベーター協会
- 大林組は2012年2月、広報誌「季刊大林」で宇宙エレベーターの建設構想を発表した。全長は9万6000km、ケーブルはカーボンナノチューブ。2025年に地上の発着場を着工できれば、25年の工期で、2050年から静止軌道のステーションを使い始められるとしている。
出典:大林組(2012)
- 大林組の構想では、途中に月の重力と同じになる高さ(8,900km)や、火星へ向かう出発口(5万7000km)などの駅を置く。
出典:大林組(130周年)
残りの11件を見る(出典つき)
- 論文によると、鋼のケーブルでは根元とてっぺんの太さの比が「2.6×10の66乗」と現実にならない値になる。カーボンナノチューブ(強さ130GPa を仮定)なら2.6で済む。
- 2003年の NASA 先端構想研究所(NIAC)の助成による報告は、約100GPa の強い素材が必要だとし、素材が「2年で手に入る見込み」、15年・100億ドルで動かせると見積もった。
- 2018年、80GPa を超える強さのカーボンナノチューブの束が作られた。ただし長さはセンチメートル。
- これまでに作られたカーボンナノチューブ1本の長さは、最長で550mm(2013年)。宇宙エレベーターに要る長さは約10万km。
- グラフェン(炭素の1層のシート)の強さは130GPa と測られ、「これまで測った中で最も強い素材」とされた。
- 国際宇宙エレベーター協会(ISEC)の記事は、グラフェンでケーブルの生産が5〜10年で始まりうると書く一方、大きな単結晶のグラフェンは「まだ大量にはできていない」と認めている。
出典:ISEC(2023)
- 静岡大学の超小型衛星 STARS-Me(2018年に国際宇宙ステーションから放出)は、約10mのひもで2つの衛星をつなぎ、3×3×6cm ほどの小さな昇降機を動かす計画だった。公式ページに、昇降の実験の結果は書かれていない。
- 後継の STARS-Me2 は2025年に打ち上げられたが、一度も信号を受け取れないまま、2026年3月に大気圏に再突入したとみられている。
- 大林組は国際宇宙ステーションの外で、ケーブル用のカーボンナノチューブの糸を宇宙にさらす実験をした。1回目では原子状の酸素によるとみられる傷が見つかり、2回目は糸を覆う材料を変えて試した。
出典:大林組(2020)
- 宇宙エレベーター協会(JSEA)の建設プランは、10万kmのケーブルで、プロジェクトの開始から25年で実現すると見積もっている。
- 月の側からケーブルを伸ばす「月の宇宙エレベーター」は、カーボンナノチューブでなく今ある素材でも作れ、地球のものよりずっと軽いとする論文がある(2004年)。2019年には、月にケーブルの根元を置いて静止軌道の近くまで垂らす案も出た。
出典:国際宇宙会議(2004)
ほかに確かめた出典:arXiv(2019)
発表に書かれていないこと(効き目・安全性・値段・確実な時期など)は書いていません。この内容は2026年10月17日に公式の発表を確かめたものです。誤りや続報に気づいたら訂正の申し出からお知らせください。
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実現の予定:模擬の実験は2026年10月31日まで(人が火星に住む時期は発表に書かれていません)
アメリカ
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よくある質問に、この記事に書いてあることだけで答えます。
宇宙エレベーターはいつできるの?
決まった時期はありません。大林組の構想は、2025年に地上の発着場を着工できれば25年の工期で、2050年から静止軌道のステーションを使い始められるとしていますが、これは条件つきの見積もりです。
何がいちばんの壁なの?
ケーブルの素材です。研究室では80GPa を超える強さのカーボンナノチューブの束ができましたが、長さはセンチメートルで、要る長さは約10万kmです。
どんな仕組み?
赤道の上空約3万6000kmで地球と同じ速さで回る静止衛星から、地球側と宇宙側にケーブルを伸ばし、人や物を運ぶ仕組みです。
宇宙で実験はしているの?
静岡大学の超小型衛星 STARS-Me で小さな昇降機を動かす計画がありましたが、公式ページに昇降の実験の結果は書かれていません。後継の STARS-Me2 は2025年に打ち上げられましたが、一度も信号を受け取れないまま、2026年3月に大気圏に再突入したとみられています。
月のほうが先にできるの?
月の側からケーブルを伸ばす「月の宇宙エレベーター」は、今ある素材でも作れ、地球のものよりずっと軽いとする論文(2004年)があります。ただし試作の発表はまだ無く、理論・計算の段階です。
楽園の泉のとおりになるの?
仕組みは理屈の上では固まっていますが、強くてとても長いケーブルがまだ作れません。作れたカーボンナノチューブ1本は最長550mmです。



